夫婦愛

 
夫婦愛とは、互いに深く愛していながらも、空気か水のように普段あまり意識しない愛情です。
普段の夫婦喧嘩はすぐ仲直りできますが、夫婦仲が悪くなり離婚にまで発展しそうになった場合の仲直りのコツは、我慢するのでなく、許すことです。
そうして良いところを認めるのです。

夫婦愛と仲直り

夫婦愛とはどのようにして作られてくるものか、また破綻しそうになった夫婦仲の仲直りの方法などについてお話してみます。

夫婦愛

愛情意識模式図
この図をご覧ください。
この図は愛情意識の状態を年齢に対して模式的に示したものです。

赤い曲線は、代表的な恋愛結婚の愛情意識の移り変わりを示しています。
ピークの所で結婚していますが、その後は愛情意識は減少し、夫婦愛に移行していきます。
恋愛が始まった直後の登り途中には失恋の場合が記されています。

もう一つは見合い結婚の場合です。
恋愛の場合とは違い、ピークを持たずに夫婦愛に行っています。

夫婦愛になってしばらくしたところに点線で示されているのは離婚の場合です。
離婚してしまわないうちに再び上昇して元の夫婦愛に戻っているのは仲直りした場合です。

さて、恋愛における非常に高いピークと、その後の夫婦愛とに差が示されていますが、これは愛の程度そのものを示しているわけではありません。
恋愛の場合、愛に対する意識は非常に高い状態になるのが普通です。
さすがに仕事に没頭している間は意識に登りませんが、一休みしている時も、趣味を楽しんでいる時も、とにかく自由時間ならあの人の事が思えて仕方ありません。
今頃なにしているのかなぁ、友達と食事にでも行ってるのかなぁ・・などと思ってみたり、この先結婚はいつ頃どのようにしようかとか、頭から離れることがないのです。
ただ、片思いとか、まだ恋愛が始まったばかりの時はそこまでの事はありません。
愛について意識が非常に高くなるのは、相手の方も自分を心から愛してくれており、自分もあの人の事を心から愛している場合です。

このような愛で愛し愛されている時には、「愛しています」などとはお互いに言いません。
もし言うとすれば、全く初期の段階か、愛しているふりをしている場合です。
本当に愛している人には、「愛しています」などという言葉は不要なのです。心が直接伝わってきます。
こちらの心も相手に自然に伝わりますし、相手の方の心も私には分かります。

そうしてめでたく結婚できますと、今まで頭から離れなかった愛情はだんだん意識に登らなくなってきます。
愛が無くなってくるのではありません。
愛の質が異なってくるのです。
夫婦の愛情に変わってきます。夫婦愛です。

恋愛中の愛は、結婚を目指す愛と言っても良いかもしれませんが、結婚が達成された夫婦愛は、生活を共にしている状態での愛ですからどちらかと言えば本物の愛と言うことが出来ます。

恋愛中はアバタもエクボとよく言われますが、ただあの人と一緒になることを目指して愛するのです。
だれが何と言ってもこの二人の愛を止めることは出来ません。
どうしてもだめなら二人で心中しようとまでも思うほどです。
全くことばでは説明のしようのない、強い愛情です。二人がともにそのような強い愛情を持つのです。

見合の場合には、嫌でさえなければ結婚出来ることが必然的に決まっているわけですから、あの人と一緒になることを目指す愛にはなりません。
互いに嫌いでなければ、結納を交わし、結婚式へと進行していきます。
早ければ2〜3ヶ月、長くても半年か1年くらいで結婚になります。

そのため、結婚前の付き合いでも、恋愛の時のような激しい愛に燃えることはありません。
お互いに好きになり、ああこの人と一緒になれるのだな、嬉しいな、と言うような気持ちです。
見合で結婚してからは、毎日が楽しくなります。仕事が終わればわき目も振らずまっすぐ家に帰ります。
顔を見れば何かしら安心感も得られますし、幸福感に包まれます。

そうして1年か2年たちますと、二人で生活するのが当たり前となりますから、「愛している」ということは頭の中に意識として登って来なくなるのです。
頭の中に登って来なくても、互いに愛しています。
お腹が痛いと言われれば、大丈夫なのか本当に心配になりますし、熱でもあれば病院に一緒に行きます。

夫婦愛は空気か水みたいなものです。
夫婦はお互い非常に大切なのに、普段は意識に登らない愛情で結ばれているのです。
もし、妻が、夫が、いま亡くなったらどれほど悲しいことでしょう。
その存在は互いに意識されなくても、愛は通っているのです。
旅行に行くのにも、一人ではつまらないです。やはり二人で行きたいです。

夫婦愛を言葉で説明しようとしても至難なことです。
表現のしようがありません。
「愛しているのだけれども、普段は意識に登って来ない愛」だと言うより仕方ないです。
空気や水と同じで、もし、相手が亡くなったことを考えてみると、愛していることが認識できます。
今、もし、亡くなれば本当に悲しいです。愛しているからこそ悲しくなるのです。

夫婦喧嘩はどこの家庭でも当たり前のことですし、しょっちゅう起こります。
互いに気遣いや遠慮をしなくてよい夫婦だからこそ、つい、自分の主張をしてしまい喧嘩になるのです。
それでも、根底に夫婦愛が横たわっていますから、次の日には仲直りしてしまっています。

夫婦愛とは、「普段は意識に登らない夫と妻の深い愛」と言えます。

離婚への道

結婚後しばらくすればお互いに夫婦愛が芽生えてきます。
夫婦の間に生まれる愛は、恋愛の時の激しい愛情とは異なり、互いに尊重し合う形の愛になります。

恋愛結婚の時には、恋愛中、世の中にはこの人しかいないと思えるほどの熱愛ですが、結婚してからの愛はその熱烈さは影を潜めてきます。代わって夫婦愛と言う愛になりますが、この夫婦愛には強烈と言うか、熱烈さは伴いません。
恋愛の時に比べれば、愛としての意識は薄くなってきます。決して愛が無くなるのではありませんが、意識からはなくなってきます。

見合い結婚の場合には、最初ほとんど無かった互いの愛が育ってきます。 恋愛の時とは少し違いますが、最初の間はよく似た感じであり、相当相手を愛すると言う意識は存在します。
しかしそれはほんの短い期間であり、夫婦としての互いを認め合い、尊重し合う愛が育ってくるのです。
夫は妻を、妻は夫を信頼し、一生この人に命を預ける心が出来てきます。
夫婦愛が育ってくるわけです。

ところが、本来ならば順調に夫婦愛となって固く結ばれていくのですが、時として離れていくことがあるのです。

[20年後の離婚]

結婚後20年近くたってから離婚話になることがあります。
ここまで長く夫婦生活を続けてこられたのに不思議なことですが、現実には結構多いのです。
20年と言いましたが、それは10年の場合もありますし色々でしょうが、結構長く続いたのに夫婦仲に溝が出来てしまうことがあります。

浮気が原因の事もあります。
夫婦間の愛が無くなったのではないのですが、別の人を好きになってしまった場合です。
男の人は複数の女性を同時に愛することが出来ると言われています。
日本やその他多くの国では一夫一婦制ですが、イスラムの世界では一夫多妻が認められています。
ただ、イスラムの場合、何人かの妻を持つことは許されていても、どの妻をも平等に愛するよう厳しい定めがあり、実際にはなかなか大変だとのことです。

動物の場合、オスが縄張りを持って複数のメスを囲い込むことがあります。
逆に、アリやハチなどでは一匹の女王が複数の夫を持つこともあります。

人間も動物ですから、本能的には複数の相手を求めても不思議ではありません。
ただ、理性と社会制度から他の異性を求めることは避けられているのです。
しかし何かのはずみで、その理性が失われ、浮気に走ってしまう場合が起こります。

結婚後何年かして、互いが空気のような存在になって来た時に起こりやすいのです。
夫婦仲が悪くなったために浮気をしたわけではなく、夫婦として愛し合っているのに浮気をしてしまうわけです。

そのまま進めば離婚に行ってしまうでしょう。

[性格の不一致と言われる離婚]

結婚し、夫婦愛も出来てお互いに愛し合うようになってきたころに、[性格の不一致と言われる離婚]と言われる話が出ることがあります。
しかしどうもそれらの多くは、性格の不一致ではないようなのです。そう呼ばれているだけなのです。

結婚後何年かしますと、相手の欠点が目に付くようになり、許せなくなってくるためなのです。
人間、どんな人でも欠点はあります。完璧な人などこの世には存在しません。何がしかの欠点はあるのが当たり前です。

恋愛結婚にこの例が多いと言われますが、恋愛中にはアバタもエクボと言われるように、相手の欠点など全く気になりません。
ところが結婚して、熱が冷めてくるとその欠点が気になってくるわけです。
見合い結婚の場合には、仲人が人選したり、結納までしばらく冷静な交際を行うことによって相手の欠点を比較的早くに発見できます。
その欠点を承知で結婚に至りますので、比較的このような例は少なくなるわけです。
しかし見合い結婚と言っても、まだ見つけられなかった欠点が見つかり、これが耐えられなくなればやはり許せなくなってくるのです。

[歩く道が違う場合の離婚]

夫が勤め人で、妻が専業主婦と言う場合にはあまりこのような例はありませんが、両者とも職業を持っている場合にはそれぞれの考え方が異なり、歩く道が異なることがあります。
一緒にはなってみたけれども、夫婦生活は出来ないと感じられ、両者話し合いのもとに離婚する場合もあります。

[原因不明の離婚]

先にお話ししたような原因もなく、生活においても特に不満もないのにどうしても夫婦仲が悪くなってくるのです。
なぜなのか、互いに嫌いになってくるわけです。
今、互いに嫌いになってくると言いましたが、一方の方だけが嫌う場合もあります。

私の知っている人でこの例の方が居られます。
奥さんがどういうわけかご主事を嫌いになられ、離婚になってしまったのです。
奥さんに聞かれても、何が嫌なのだと言う理由は話されなかったそうです。
お子さんも二人居られ、外見的には仲の良い夫婦に見えたのですが、奥さんが子供を連れて出ていかれたのです。
ご主人は大変嘆いておられました。自分が浮気したわけでもなく、奥さんにいい人が出来たわけでもなく、どうしてこんなことになったのか自分には分からないのだと言っておられました。

仲直りの仕方


夫婦喧嘩は大きく分けて2つに分けることが出来ます。
一つは夫婦愛があり、夫婦仲は良いのですが時々言い争いなどの喧嘩になる場合です。
もう一つは、夫婦愛が薄れてきて、夫婦仲が悪くなってきた場合です。

第一の場合の、夫婦愛があり、夫婦仲は良いのに喧嘩してしまった場合は、心配はありません。いわゆる犬も喰わない夫婦喧嘩です。普段通りにすれば2〜3日で仲直りできてしまいます。夫婦愛が根底にあるからです。

問題は第二の場合の夫婦愛が薄れてきた夫婦喧嘩です。
離婚に至る場合もありますが、仲直りできる場合もあります。
前に述べましたが、互いの歩む道が違っていた場合は、そもそも結婚するべきではなかったのです。恋愛の状態で理性的判断が出来ず、結婚してしまい、後日その事に気が付いたのです。この場合には両者が離婚を望むなら別れた方が良いでしょう。

さて、一般的な場合の夫婦仲が悪くなってきた時、いかにして仲直りするかと言うことです。
仲直りしたいと考えておられるのはどちらですか。奥さん?、それともご主人ですか。それとも両方ですか。

ご主人が浮気されて、奥さんが立腹されている場合、ご主人が奥さんをまだ愛しておられるならば仲直りは可能です。
説明するまでもなく、ご主人はその愛人とはっきり別れ、平身低頭謝ることです。奥さんも立派な大人の分別をお持ちの事と思いますので、許して下さることと思われます。
しかしご主人の気持ちがすでに愛人の方に向いてしまっている場合、これは考え物です。
奥さんとしてはもう一度戻って来てくれることを望まれると考えられますが、ご主人がその方向に行って下さらないことには仲直りできません。
ご主人の気持ち次第と言うことになりますが、喧嘩するのではなく、冷静に話し合いをしてみなくてはなりません。
子供さんが居られるならば、養育費とかそういう話しの前に、大事な可愛い子供さんの将来のために父なし子にしてしまってよいのか十分考えてもらわなくてはなりません。
離婚となれば、ご主人が子供を連れて愛人と暮らされることは多分ないでしょうから、奥さんが子供を見ることになるでしょう。
子供さんにとってそれは幸せな道なのでしょうか。進学にしても就職にしても、あるいは子供さんの結婚の場合にも、なぜ父親が無いのか言わなくてはなりません。父は愛人を作って出て行ってしまったのですと言わなくてはなりません。
ご主人!、お子さんをそのようにしてしまってよいのですか!。
お願いしてみても、奥さんも、お子さんも捨てて愛人のもとに走られるご主人ならばもうあきらめた方が良いのではないでしょうか。
第三者や家庭裁判所にお願いして、仮に戻って来てもらえたとしても、その先、夫婦仲が取り戻せるとは限りません。
もし本当に反省しておられるなら結構ですが、しかたなく戻ってこられたのなら再び同じことの繰り返しになることも十分考えられます。

奥さんが浮気なされて、子供連れで彼氏の所に行かれたのなら、ほとんど望みはないと考えられます。
女の方の浮気は、男の人の浮気と質が異なります。
男の浮気は一夫多妻と同じようなことですが、女性の方の浮気は本質的に別人を愛してしまっており、現在のご主人の事はもう愛されていない状態になっていると考えた方が良いです。
よく話し合ってみることが第一に必要ですが、本当に彼氏と別れてもらえるかどうか難しいかもしれません。

浮気はしていないのに、何となく夫婦仲が悪くなってくる場合が多くあります。
性格の不一致とよく言われますが、大方の場合、相手の欠点がたまらなく嫌になってくるのです。
目立った夫婦喧嘩はしないのですが、両者の夫婦愛が薄くなってくるわけです。

このような場合に仲直りできた実例をお話しします。私の子供の実際にあった話です。

私には娘がいます。その娘が大恋愛の末、結婚しました。
旦那さんは国内有数の大メーカーに勤められ、高級取りです。
一戸建ての住宅を購入し、子供も生まれ平和に暮らしていました。
上の子が高校生くらいになったころですが、旦那さんが私の家に来られて、「最近夫婦仲が悪くなってきているのです」と言われるのです。
びっくりしましたが、旦那さんの話の要点をまとめてみますと、
自分は男として十分な仕事をし、普通の人よりも収入も多く、何の不自由もさせていないはずなのに、なぜかしら最近不機嫌なことが多く、このままでは離婚にも行きかねないと思われますので、何とか解決をお願いします。
と言うお話でした。

早速娘を呼び、このような話があったのだが本当かね、と聞いてみますと、「あの人は我がままばかりで、家のことなど何もしてくれないし、嫌になってきている」と言います。
夫婦仲が悪くなってきていることが事実であり、確かにこのまま進めば離婚に繋がりそうな気配でした。
それで、私は娘を諭したのです。
お前は昔から賢い子だからよく考えてくれ。
あの人は以前、お前が惚れこんだ通り、男として立派な人だ。
男も女も欠点のない人などこの世にはいないのだよ。多少の我がままは許してやるより仕方がないよ。そうして、彼の立派なところにもう一度惚れ直してみたらどうかねと。
すると娘は、「何で私だけが我慢しなくちゃいけないのよ!」と、猛烈に怒りました。
それで私は言いました。
損得の話しじゃないよ、彼にも直させるなら自分も直す、とお前は言っているわけだが、お前だけでもいいじゃないか。
お前だけが許してやれば、夫婦仲は元に戻ると思うよ。「私だけが」などと損したようなことを思いなさんなと。
娘は有難いことに、理性的判断の出来る女でした。
私の言っていることをやってみることにすると約束してくれたのです。

するとどうでしょう。
2〜3ヶ月もした頃でしたか、娘たちの子、私から言えば孫ですが、その子の発表会に二人仲良く来ているではありませんか。
どうなったね、と聞くまでもありません。仲直りできていることは見ていればわかります。
ほじくり直して聞きなおす必要はないのです。
立ち直ってくれたのです。

実例を持ってお話ししましたが、「相手の欠点が嫌になって、夫婦仲が悪くなってきた場合」の、仲直りの秘訣は、「相手の欠点を許し、良いところを認めてやる」と言うことです。
人間だれでも欠点があります。
その人と一緒になったのです。
相手の欠点は直させるのではなく、許してやりましょう。そうして良いところに惚れ直すことです。

仲直りの仕方のまとめ

恋愛で激しく燃えた愛情も、結婚すれば夫婦愛に変わってきます。
見合い結婚ならば最初無かった愛情も徐々に深くなって夫婦愛になってきます。

夫婦愛とは、夫婦が互いに深く愛していながらも、その愛情は空気か水のように普段あまり意識しない愛情です。
犬も喰わないと言われる普段の夫婦喧嘩はすぐ仲直りできます。
もし浮気が原因なら、当然その人と別れ、二度と浮気しないと誓うことが必要です。

しかし徐々に夫婦仲が悪くなり離婚にまで発展しそうになる場合があります。
このような場合、仲直りするコツは、我慢するのでなく、許すことです。
そうして良いところを認めることです。



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