問題を解決する

新製品開発が私の仕事
 
新製品開発においてはいつも問題を解決する必要が出てきます。
誰もやったことのがないのですから問題が出るのは当然です。
情熱をもち数学を駆使するなど、どのようにして乗り越えてきたのか私の経験をお話しします。

私の選んだ道

電気関係の設計の道

私は子供の頃から電気の物を作るのが好きでした。
夏休みの工作などはほとんど電気の工作で出しました。

高校になり、この先どいう道に進むべきかを真剣に考えました。
私は数学と物理が得意でしたので、数学の先生になる道と電気の会社に入る道とどちらにするか悩みました。
考えに考えた結果、好きであった電気の道に進むことにしました。
大学は電気工学を専攻し、電気関係の製品を作っている会社に入ることが出来ました。

念願の電気の会社に入ることが出来、さらに開発業務、それも新製品の開発に着くことが出来ましたのでもう言うこと無しです。
私の描いた望み通りの道を歩き始めることが出来たのです。

仕事は甘くない

入社してすぐには右も左も分かりませんから、上司の指示通り手を動かしていればよかったのですが、少し年数がたち、ある程度の役職もつくようになりますと仕事の大変さが分かってきました。

好きな道であり、望んだ道ですから良いのですが、それにしても想像を絶するとでも言いたいほどの過酷さでした。
実社会における新製品開発と言うのは子供の頃の電気工作とはまるで違います。
基本的には電気に関する製品を新しく考え出すと言うことですから同じなのですが、条件が違うのです。

実社会の新製品開発の厳しさは、優れた機能を出すことは当然ですが、いついつまでに開発しなければならないと言う納期があり、ゆっくりしている暇がないのです。
さらに製品コストです。
お金をかければ必要な機能を満足することは容易ですが、それでは他社に負けてしまいます。
安価にしなくてはなりません。

安価で高機能な製品を短期間で開発しなくてはならないのです。

問題の山積み

この世の中にない物、誰もやったことのない物を作り出すのが新製品開発です。
実に楽しいです。
しかしそう簡単には出来ません。
これならよいだろうと試作してみますが、試験してみますと希望していた性能が得られないのが常です。
お金はかけられませんから、ぎりぎりの設計にしてあります。
ではどうすれば良いのか考えるわけです。

その問題と言うのが一つだけなら大したことはないかもしれませんが、いくつも一緒に出てきます。
短期間にそれらを解決しなくてはなりません。
どうしても深夜残業になってしまいます。
仕事をすればするほど問題が発生し、問題の山積みになってしまいます。

問題の解決

山積みになっている問題ですが、その問題を解決するのに一番大事なことは情熱をもつことです。
この仕事に惚れ込み、その製品に惚れ込まなくてはなりません。
いやいやで仕事をしているならば決して答えは出てきません。

惚れ込んで情熱をもって接していますと、製品が自分で教えてくれることがあります。ここが具合悪いから機能を出すことが出来ないのだと。
人と雑談している時にも問題解決のヒントを得られることもあります。

試験してみて壊れてしまった残骸を穴のあくほど見つめます。
電気的試験で一瞬で壊れてしまった残骸です。
高速度カメラで撮影しても一コマの中で終わってしまっています。
電気の現象は早いです。当たり前ですが。
じっと見つめ続け、考え続けます。
高速度カメラよりもスローモーションで考えます。
ここがこうなって来るとこうなるから、次はこうなるのだろう。
ああ分かった。きっと原因はこれだ!と直感できることが多いです。

しかし複雑なものの場合、いくら眺めていても分からないことが多いです。 箱の中で電気的な爆発が起きた場合、その箱はどのように壊れ、人に対してどのような危害を加えることになるかと言う実験があります。
製品機能として、人に危害を加えるよえなものではいけません。
箱の内部で爆発が起こっても箱は人を守るように作用しなければならないわけです。

この実験は大掛かりなものであり、一回の実験のためには2ヶ月程度の準備が必要です。
頭で考えた設計ですとなかなか合格できません。3回やり直せば半年かかってしまいます。

私は数学とコンピューターを駆使してこの問題を解決したことがあります。
いわゆるシミュレーションです。
計算式を作り、コンピューターに計算させますと、実験しなくても答えが得られます。
箱を作っている鉄板の厚みを変えてみたり、大きさを変えてみたり自由自在に計算できます。
計算式を作るには数日間を要しますが、計算はあっという間に出来ます。
具合悪い答えならば条件を変更して再計算し、OKが出るまで繰り返すのです。
この方法ですと、10日もあれば設計を完了することが出来ます。
もちろん、この計算に誤りがないかどうか、実際の実験も行います。

こういう数学を駆使しての電気製品の設計は私の得意とするところです。
数学は昔から好きでしたし、会社に入っても実用になるだけの力を持っていたからです。

しかし製品開発における問題の解決は、そんなにうまく行くことばかりではありません。
多くの場合は計算式そのものを作ることが出来ないからです。

ではどのようにしてこの問題解決と言う峠を乗り越えてきたのかと言いますと、すでにお話しした通りです。
情熱をもって製品ととことんにらめっこすることです。
そうすれば解決の糸口は必ず見つかります。

50年間会社で開発をやって来ました。
全て問題を解決して生き抜いてきたのです。
長期間かかったものもありますが、問題を残したままの製品は一つもありません。問題が残っていれば製品にならないからです。

問題を解決するためには、まずその問題を起こしている製品に対して情熱をもって接することです。
穴のあくほど見つめることです。
そうして考えるのです。
考え考え、考えとおせば、必ず問題を解決することが出来ます。



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