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線香の煙の前の白い箱。本当に愛する人がこの中に眠っていることなど信じられませんでした。 葬式も終わっており、抱きかかえたいのを我慢して泣く泣く帰ってきました。 白い箱もうすぐ結婚と言う直前に、知らせがあったのです。急死したとの知らせです。 遠く離れており、直接の親戚にはまだなっていなかったためか、葬式も終わってから知らせが届きました。 びっくり仰天して飛んでいきました。 案内された部屋には白布のかかった壇があり、線香の煙と白い箱がありました。 写真もありましたがあの人の顔です。 考えてもみなかった事ですので、一瞬だまされているのではないかと思いました。別れさせるための芝居ではないかと。 本当らしいのです。 あの、本当に愛する人が亡くなったのです。 そして、今、目の前にあるこの白い覆いのある箱の中に入っているのです。 そんな馬鹿な話があるものですか。 信じられないですよ。 悲しいのを通り超えて、挨拶も、お念仏もまともにできず、ただ茫然でした。 なんでお前がこんな所にいるんだ! 嘘だろっ! どうしてだ、どうしてだ。 やっと口が利けるようになって、原因などたずねてみました。 狭心症で急死されたとのことでした。 苦しみながらも、私の名前を呼んでいたことを伝えられました。 白い箱を抱きしめたかったです。 誰もいなければきっとそうしていたに違いありません。 白い箱は本当に恨めしいです。 あの本当に愛する人の入っている白い箱は本当に悔しいですし、悲しいです。 にこやかに笑っている写真も泣いているように思えました。 一生の中で一番悲しい思いをしたのがこの時です。 親、兄弟もすでに亡くなり、その都度白い箱は見ていますが、これほど悲しいことはありませんでした。 幸せな人生を楽しむことをテーマとしてこのHPを書いていますが、こういう辛く悲しいことも人生の中にはあるのです。 毎日毎日を面白おかしく、楽しみながら暮らせる人生など世の中にはないのではないかと私は思っています。 こういう辛い壁を通り超えなければならないのです。 半年ほどはこのショックが続きましたが、仕方ないものは仕方ないと振り切ることにしました。 本当に愛する人はいつまでも生き続けている本当に愛する人は白い箱に入ってしまいましたが、半世紀以上たった今でも、私の心の中では生き続けています。現在の妻は、結婚してもう50年を過ぎ、金婚式も済みました。 夫婦としての愛情も互いに持つことが出来、浮気もしていません。 子供も孫も元気にしていてくれます。 そんな中においても、白い箱の彼女は私の心の奥の方にちゃんと生きているのです。 時々出てきますが恨みごとは言いませんね。 妻にはこのことを話してありますので、時々妻がふざけ半分にやきもちを焼きます。 そんな妻は大変可愛いです。 この平和な私の姿を高い所から見て、彼女も安心しているようです。 |